第一岩稜   昭和55年2月17日

  第一岩稜
コースタイム    昭和55年2月17日 (晴)
大沢休泊所発4:28〜第一岩稜末端発9:15〜雷岩側面取付12:20〜お鉢稜線着  14:42〜山頂〜仏石沢上部〜大沢休泊所着15:52 
メンバー:小林久仁彦、工藤誠志

 いつものとうり早朝の出発。たびたびの大沢への入山で、わが庭的な気分で進む。約1時間でダルマ石、その先のピナクルから大沢の沢筋に向かってトラバースにうつり、沢底に着く。落石を避けるため、沢筋右の右岩稜末端の斜面をインゼルに向かって進む。第一岩稜末端の双峰ピナクルをめざし、岩稜に続く雪稜を登り岩稜の基部に着く。アンザレインの準備をしている時、突風がおき、小林君のザックを飛ばしてしまう。幸いに、200メートルほどで、そのザックは止まった。彼は、ぼやきながらも、取りに下って行く。彼の姿が、点なったがとぼとぼとこちらに近づいて来る。戻って来て彼がいうには、ザックのフタが開いていたため昼食とツエルトを失ったそうだ。落ち込む彼の心とは関係なく、まだ、太陽はとどかないが、快晴の空に励まされ、登り始める。

 双峰ピナクルの左の凹角を登って、岩稜上に出る。岩稜を3ピッチ進む。途中には、切れ落ちた小岩峰があり、それを飛び越して対岸に達するものもあった。第一、ニ岩稜間の中央に広がる中央壁に突き当たる。岩稜が消えたところから、右上しながらフェースを登攀して、その上の雪面に達しピッチを切る。この雪面の先に、二つの角のような小ピナクルを持つ岩の「鬼の面岩」がある。それをめざして雪面を2ピッチ進む。次に雪面を、2ピッチ進み、第1岩稜を分断し左俣に達するノコギリ岩に行く手を阻まれる。その段差の少ないところから越えて、長い雪面に出る。その先には、雷岩がそびえている。その基部まで登る。雪一つつけずそそり立つ雷岩の正面壁は、アイゼンを着けて登れる世界ではない。雷岩の側壁にそって、雷岩の稜上に出れる場所を探しながら進む。2ピッチ進んだところの凹状の割れ目を見つけ、小林がトップで雪面の稜上に出る。正面壁ではないが、初の雷岩を登った自己満足で二人でニッコリした。

 大沢インゼルの最後の砦となって横に広がる段差の小壁に向かう。崩れた箇所を発見し、右上してそのを抜け、山頂稜線に達した。そのとたんに釜の赤い壁が目に飛び込み、強い刺激を受ける。ほっとするのもつかの間、強風にうながされて、剣が峰に行き、戻って、仏石沢から帰路につく。